映画「ズートピア」感想。草食動物と肉食動物が"平等な社会"を築いたとき…?アイデアの活かし方がスゴい
映画「ズートピア」観てきましたよ~
前回の記事では「シビルウォー」感想を書いたんですが、その矢先にコレも観て…考えてみればこの二作品どっちともディズニー資本がかかわっているんですよね~。どこまで儲ければ気が済むのだディズニー!w
それはおいといて。評判通りのシナリオの完成度に、ワクワクする街並みや風景や世界観、そしてなによりジュディたちケモノキャラクターの魅力…めっちゃ楽しみつつ、やっぱディズニーってすっげーなぁ!と思わされた傑作でした。
楽しいシーンってだけかと思った?残念!伏線もあるのでした!
劇場へ行く前にいくつかネットやらで感想は見てたんですが、みな一様に『シナリオが上手い!』って言うんですよね。まぁ観てみたら、ホントその通り。
物語のなかで一見ふつうに楽しいシーンがあったとして、それが実はそのあとの大ピンチ脱出やチャンスをつかむ秀逸な伏線になってることが何度もありました。でもってそれが進行上まったく違和感なくちりばめられてるので、その鮮やかな回収っぷりに「上手い!そうきたか!」の連続。とくに最初の演劇シーンとかね…もうどんだけ脚本練ってんのよ!って恐ろしくなるレベルw
他の動物は…と想像したくなる「ズートピア」という都市の魅力
ストーリー展開だけでなく、舞台となる「ズートピア」の世界観の構築もめっちゃ魅力的でした。
ズートピアは街の周辺に住む動物に合わせた「熱帯エリア」「砂漠エリア」「北極エリア」みたいな区分けがあるという設定。なので現代都市のほかに、時に雨降るジャングル、時に凍てつく山の中…と、色んなロケーションが出てきて、それぞれのシーンならではの冒険が展開されていきます。このおかげで視覚的に新しいものが次々でてきて飽きが来ないのも観ていて楽しいところ。
観終わったあとは、「この都市のいろんなエリア区分けのなかに他にこんなロケーションもあるだろな」とか、「ほかにどんな動物がそれぞれどんな職業についているだろう」とか、さらには劇中にヌーディスト*1が出てくるみたいに「ケモノたちはこんな"文化"もあるだろう」とか…そんな風に二次創作な想像をかきたてる懐の深い世界観もメチャ良かったです。
種族の違いからの恐怖心、社会での多数派と少数派…確かに深いよズートピア
ところで、今TVで流れているこの作品のCMで「"ズートピア 深い!"で検索してねっ」とかバージョンがあるのですが…
コレはおれ「うるせぇ!深いかどうかは観たこっちが決めんだよ!」って言いたくなるのでめっちゃ嫌いです。嫌いなんですが、ただ…
うーむ、確かに「ズートピア 深い!」とか検索したくなるくらいテーマの描き方が鮮やかで…ぐぬぬディズニーめ!
つーのも「ズートピア」を観る前に事前情報で、「差別とか人種問題とかを暗に描いている」と聞いてて…まぁ『かよわいウサギとズルいキツネとか言われたけど大活躍できたよ!だから差別はよくないよ~!』とかそういうのだろうなんて思ってたワケです。…全然そんな単純なもんじゃなかった(驚愕)。
じっさいはそこから一歩も二歩も踏み込んで、明確な人種差別は否定されるインターナショナルが実現した社会であっても起こり得るであろう差別問題の構造をあぶりだしているというか…とにかくスゲェーです。
こっからめっちゃネタバレ。
まずズートピアでは明確に「草食動物も肉食動物も平等な社会」が実現しています。
たとえば、ズートピアの警察署長は草食動物のスイギュウで、肉食動物だけど頼りないチーターの部下をいつもドヤしつけていたり…スーパースターのガゼルがトラのバックダンサーを従えていたり…
しかし文明化するより以前の太古には、双方が食う・食われるの上下関係があったのも事実で、田舎ではキツネのガキ大将が「イザとなれば肉食動物のがオマエラうさぎより強いことを忘れんなよ?」と幼いころの主人公にすごむ場面も冒頭にあります。
そんなシーンもありつつストーリーが進んでいくと、悪役の策略からその(潜んでいる)草食と肉食の格上・格下関係が一気に逆転するような事件が起こります。人口?比率の少ない肉食動物たちは「社会」の多数派を占める草食動物からまさに「社会的圧力」を加えられていく展開に…
ここらへんの、肉体的には強いはずの肉食動物であっても、文明化によって構築された「社会」という仕組みの前には全く無力となる、っていう流れはめっちゃ現実に通じているなぁ…と驚きます。
例えばアメフトとかバスケなどの世界だと、アジア人選手は人種的に体格や筋力の差でなかなか肩を並べることが出来ない。人類みな平等を実現したとしても、違いがあればそういう「差」も明確にあって、そこから生まれる僻みとか、恐怖心とか、ネガティブな感情も必ず表れてしまう。
そしてズートピアのケモノたちも我々同様に「社会」を作っているので、たとえ肉食動物の頑強さは個々にあっても「社会の敵」になってしまったらもう生きていけない。まさに「社会的に抹殺」という手法…
まさかこんな可愛いケモノキャラたちが活躍する映画でこんな手を使う悪役が出てくるとは思わなかったッスよ…!
とはいえそこは明るく楽しいディズニーのアニメなので、起こった騒動の後始末はあっさり解決してめでたしめでたしになります。が、それにしても擬人化した草食動物と肉食動物ていう二つをモチーフにすることで社会問題のこんな突っ込んだ部分をあぶりだすストーリーテリングができる…その発想力にも惚れ惚れしますね。
次の記事でキャラクターかわええ語りとか
ぬわああああん、また記事が長くなってしまったもおおおおん!
でもそうやって語りたいくらい「作りこまれてる」作品です。ズートピア。
この記事ではどんどん小難しい部分ばっか書いてしまったので、次の記事ではさらっとジュディたちキャラクターに萌えたシーンとか書いていこうかなー。
これ、観たら欲しくなるだろネ…タカラトミーは脚本担当スタッフに感謝しまくるべき(ぉ
*1:劇中の動物は服を着ているから、ハダカの動物こそアブノーマルなのか自然なのか…という高度なギャグ