オハコのこんな事ばっか考えてる。

オハコと申します。オタク関連を中心に広く浅く何かと考えた事を書いていこうと思います。

「ブレードランナー2049」感想!「エモい」映像と濃密なシナリオが、じっくりと観客に"問い"を投げる贅沢な作品

映画ブレードランナー2049」見てきました…!

www.bladerunner2049.jp


「ブレラン」と聞いたら否応にもチェックしておくのが、オタクに課せられたノルマであろう…!という謎の使命感があるから、多少はね?

 

 

 

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そのまま満を持して、「 ブレードランナー2049」鑑賞…!
結果、脳内『祭り』はさらに加速…!ってわけですよ。

つーわけで、勢いのまま、感想をば。

 

 


「複製された男」の監督ならではのエモい映像

まずスゲェ…と思ったのが、映像の見せ方、テンポですね…。

実は公開ちょっと前になって知ったんですが、 今回の「2049」を監督するドゥニ・ヴィルヌーブという人。この人『複製された男』の監督だったのね!!

 

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それこそブレランと同じく、陰鬱かつ難解な雰囲気のカルト的作品(鑑賞時はラストを完全に理解できなかったw) なんですが、とにかく見せてくる映像センスが抜群。
特にラストの映像と音楽!あの瞬間が衝撃的&カッコよすぎて『意味不明だけどなんかスゴイぞこれ!』てな感じに、 とても印象に残った作品でした…。

そーか、あの映画を撮った監督が、ブレードランナーやっちゃうんだ…!なんか事前情報ではアメリカでのヒットは厳しいとか聞いてたけど、もはや関係ねえ。そんな組み合わせなら、本腰入れて見るしかあるめぇ…!とw

 

で、肝心の2049の映像ですが、今風に言うならとてつもなくエモい
前作ブレラン、はたまた同監督の「複製された男」にも通じる、無機質で沈み込むような明暗・色調・美術・構図…のセンス。

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特に人物同士がじっくりと会話するなどの、静かなシーンほど鬼気迫る「絵作り」の追求が感じられます…!

それは決して「奇抜な未来風景・ガジェットが出てきたからすごい!」とか「金のかけたCGだからすごい!」という小手先のものじゃなくて、トガリまくったセンスが作り出す凄み。

全体的にじっくりスローテンポな演出もあってか上映時間はなんと2時間44分。こんなかなりの長尺でありながら、スクリーンから片時も目が離せませんでした。

 

 

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(※前作にもあった、ゲームメーカーATARIのロゴが今回にもあったのは感激w)

演技や絵作り、世界観にメッセージ…をじっくり見せる演出をとりつつ、このリッチな映像の作り込みよう…。『効率的な商業エンタメ』がこれ然りなハリウッド映画で、イマドキこんな贅沢な作りの作品が出来たのは、あの「ブレードランナー」の続編ゆえか?w
そういう意味でもスクリーンで見ておいたほうが良い「貴重な」作品だなと思いました。

 


神は人類を造り、人類はレプリカントを造った

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ブレードランナー」つったら人類に対する壮大なテーマを示すのも作品の魅力ですが、今回においてもそれらが濃厚に展開されていきます…!

人間が作りしレプリカントが、人間のように自我を持つこと。それが前作の『脅威』として描かれていましたが、今作に描かれたのはそれとはまた違った「脅威」。それを知った瞬間なるほど~!その脅威があったか~!と納得すると同時になんだかゾッとしました。

また、前作にあった「レプリカントの発明者・タイレル博士を、反乱レプリのロイ・バッティが殺す」…いわゆる”父殺し”の図が、今作でも思わぬ形で登場するところにも、なんだかニヤリ。

あと同じリドリー・スコット作品でいうと「プロメテウス」は『創造主と、彼に作り出された人類』といった内容でしたが、「ブレラン」や「2049」で描かれるのは『人類と、彼らが造り出したレプリカント』との対立。そんな入れ子構造のような2作品の対比も面白かったり…。
創造主により造られし子らが、創造主に歯向かい挑戦するあたりはバベルの塔の物語のようでもあり、なにかと神話的モチーフを彷彿とさせますな。

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「2049」には製作総指揮というスタッフクレジットでの参加ですが、神話のように壮大なテーマをSFとして紡いでいく魅力は、まさしく「リドスコ」作品であり、ブレードランナーのシリーズの続編と言えます。

 

 

「記憶があるから笑顔がある」…印象に残ったセリフ

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印象的なシーンを挙げるなら、レプリカントに植え付ける"記憶"を制作するステリン博士が語った「記憶を与えることでレプリカントを笑顔にしてあげられる」というセリフ。

前作のブレランにも出てきた「記憶がレプリカントを人間に近づける」(ともすれば、記憶の積み重ねが人間性を作り上げる)というメッセージとの連なりも含めて、なにやら心に深く刺さるセリフでありました…。

このとき中の人の名演と相まって、ステリン博士がまるで慈悲深い女神のような存在にも見えてくるのですが…いっぽうでなんだか「神や創造主を気取ってる」ような上から目線にも思えるようにもなってきて…自分の中でこのセリフをどう捉えるべきか迷うところ。さらにラストで明かされる彼女の驚きの正体も含めて考えるとますます印象深いシーンになっていきました。

 

 

アンドロイドはAI嫁の夢を見るか?

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Kが市警に従順する忠実なレプリカントでありながら、ジョイという擬似恋愛ソフトのAIを愛しているのも面白い設定です。(※画像の女性。ホログラムなのでよく見ると向こうがうっすら透けてます)

思えば前作「ブレラン」でも、反乱レプリカントのロイとリプリーがなんかイチャイチャしてたし、前作のヒロイン・レイチェルもデッカードとの愛を育んだレプリカント

博士のような記憶デザイナーがいるということも含めて、やっぱり人造人間といえど「人間に近いもの」は情念や愛を求め始めるし、なんならそれこそが『生きるために必要不可欠なもの』ってことでしょうか…。

それこそAI・ジョイちゃんを心の支えにするKの姿は、二次元を愛するオタクのそれに通じるようでもあり、こーいう要素が『ブレードランナー視聴はオタクの義務』なんて言われる所以かw

それにしてもこのジョイ役の女優さん、なんというか「ハリポタ」のハーマイオニー役の人と同じような感覚で日本人ウケが良さそうな顔つきの美女なのがたまりませぬ。


観客を挑発し、観客に問いかけるシナリオ

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今回の2049、前述のこと以外にも考えさせられる点が様々に取り込まれているシナリオの濃密さもスゴイです。

作中での観客を翻弄するようなストーリー展開のはてに、ぶっちゃけラストは『登場人物たち、そして人類とレプリはこうなった!』なんてハッキリさせないまま終わります。

新たに現れた「脅威」は人類とどう関わっていくのか?

再登場したデッカードの行く末は?

新型レプリカントの創造主・ウォレスの『野望』は続くのか?

Kがデッカードにとった行動と、その理由は?

ホログラムAI・ジョイとの愛は、真実だったのか?

…なんて色々と考えてみたい要素が浮かんできて…それだけ作品世界に没頭したくなる魅力に満ちています。

この楽しさはそれこそ「エヴァ」とか「まどマギ」を見た後のソレに近くて、鑑賞後はソッコー「2049」についての映画評論や、2ちゃんの作品スレで盛り上がっている議論のログを読んだり聴いたり…。いろんな意見を見聞きして『なるほどそういう解釈もあるか』とか『あのシーンにそんな示唆が!?うそ、ホントォー?』とか、そーゆーのがもう楽しくて楽しくてw

特に最後の、『ジョイとの恋愛は、彼女が自我に目覚めた末の真実の愛だったのか、それともただの「製品の仕様」なのか』という部分は、劇中ラスト手前のあるシーンでますます魅力的な”謎”に…!ココはネタバレ全開で違う記事に書いてみようかな~。

 

 

ハードルは高いが、贅沢でレアで今だけの劇場鑑賞の価値あり!

といった感じで、久々にめっちゃ長文で感想をば書き散らしてみました…!

ぶっちゃけ「前作を見ていないとまずストーリー追えない」「前作を細かく踏まえた上での複雑なシナリオ」「派手なアクションシーンかなり少なめ(長尺なのに!!)」と、いろんな意味でのハードルの高さは、聞き及ぶ全米での成績も含めて間違いなし…w

ですが!SF的な世界観で、人間とはなにか?なにをもって"人間たらしめる"のか?そんなテーマをじっくり描く…前述しましたが、やはりこんなハリウッド映画を大スクリーンで見れる機会は超貴重!

オタク的にいうなら…例えばエヴァの終盤の雰囲気を面白いと感じる人ならば、これはぜひ今しかできない映画館での鑑賞をしておいたほうが絶対吉!
前作をレンタルで借りるなり、ストリーミングサービスで見るなりしてでもその価値はあると思いますよ~!

 

 

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