オハコのこんな事ばっか考えてる。

オハコと申します。オタク関連を中心に広く浅く何かと考えた事を書いていこうと思います。

映画「犬ヵ島」感想!可愛い犬パペットに萌えつつ、「日本」の美と闇?を描く傑作

未来日本が舞台!のモーションストップアニメーション映画「犬が島」を観てきました!
コマどりアニメと人形ならではのユーモラスな雰囲気とか、作り込まれた独特のフシギな映像美とか、とにかく大満足の作品でした〜さっそく感想をば。

www.foxmovies-jp.com

 

 

まずは何より犬のパぺットの造形や動きが可愛い!これだけで見る価値あり!

f:id:asitanoyamasita:20180617185358j:plain

最初は「日本が舞台の外国映画でストップモーションアニメ」ってところで気になってたんですが、他のメディアやネットなどで『あのウェスアンダーソン監督がパペットアニメーション最新作で~』みたいな評判を聞きまして…
監督の名前とか作品名を知ってるくらいしか知識なかったので「となればちょっとカルトで難解な映画だったりするのかな…?」と不安だったのですが…まったく杞憂でした!w

とにかくまずは登場してくる犬たちがみんな可愛いー!! もうこのシンプルな一点だけでみんな見たほうがいいよ!って勧めたいレベル。

登場するのは CG でも手書きアニメでも実写でもない、パペットで表現された犬たち。
たくさんの犬が登場しますが、その一匹一匹が毛並みとか目玉とかすごくディティールに凝っていて、同時に感情がしっかり読み取れる細やかな動きもあったりして…
とにかく犬が出てくるシーンは全てもれなくユーモラスで可愛らしい!

 

f:id:asitanoyamasita:20180617183707j:plain

劇中では犬同士、犬語で普通に会話しているんですが、そこで彼らがパペットであることが活きてますね。ディテールでリアルな感触に思わせつつ、少し人間くさい表情なんかはちょいファンタジーにも寄ってもいて…
CGほどデフォルメでもなく、実写ほどそのままでもない、まさに「しゃべる犬」という存在を描くのにちょうどいいバランスに落ち着いてますなと。

会話のやりとりやギャグのテンポなんかも、人形ならではの茶目っ気な笑いのセンスが光っていて面白かったです。

 

余談ですが、「犬にウィルス性の病気が蔓延している」という設定のため、登場する犬が劇中何度もクシャミをするんです。その「ブシッ!」って仕草またもー可愛くってw
人間だと「はっ、くしょん!」の「はっ、」っていう予備動作が大きいんですが、犬の場合は確かにあんな風に、素早く短く「ブシッ」ってくしゃみするよね~!つー感じでもう、萌え萌え。

 

 

不思議だけど確かな「和」の舞台美術と、日本人の人形たち

f:id:asitanoyamasita:20180617184141j:plain

犬だけでなく、ヒトの人形や背景といったビジュアル面も全てが凝っているのもスゴいです。

三丁目の夕日・ザ・フューチャー』とでも言うべきか、とにかく洋画にありがちな『ナンチャッテ日本』では決してない、近未来でありながら日本人の琴線に触れる確かな和のテイストがあるんですよね。

一番驚いたのは、唐突に相撲シーンが挟まれるところ。スクリーンの両側にでかでかと力士の四股名が表示されてて、『いやこんな相撲中継の画面?は見たことがないけど、確かに和だ!』という不思議な感覚になりました。

あと、悪役が銭湯っぽい場所で湯につかりながら書類に目を通したりするんですが(一番の画像)、ココもなんとなく『エドモンド本田ステージ』のなんかズレた感じを思い出して笑っちゃいましたw

 

 

f:id:asitanoyamasita:20180617184636j:plain

また舞台が日本なので、登場する人間キャラはほぼ日本人。それが人形で表現されるワケですが、犬同様この日本人たちの人形造形も素晴らしいな、と!

無数の民衆や大入りの観客、といったシーンも多くある作品なのですが、その一人一人が「こんな顔のおじさんいるいる、こんなおばあさんや、学生くんも!」なんて思えてくる細かい個性があって。

NHK教育の人形劇だかでみかけたような、懐かしさすら覚える素朴な顔の数々で、同じ日本人としてココもすごく心惹かれた要素です。

あと個人的に「映画ってなんか映像が暗いの多くね?」って思いがちなんですが、こちらの映画は明るいシーンがとても多くてそこも好きなところ。
人形や背景美術のディテールがよくわかるし、なによりその自信があるから暗さで誤魔化さない!って自信の表れでもありそうですね。

 


王道冒険活劇もありつつ、日本社会の痛いトコロ突いている?かもなストーリー

f:id:asitanoyamasita:20180617185211j:plain

ストーリーに関しては、各離された島「犬が島」を舞台とするファンタジー冒険ものと、ソフトな社会派サスペンスの両輪で進んでいくのが特徴的です。

冒頭に書いたように、ちょっちカルトな匂いもする作品では?と思っていましたが、犬が島の冒険シーンはまさに少年と動物が活躍し、絆を育む王道をしっかり描いていて、この部分だけでじゅうぶん子供へ向けても楽しめる作品じゃないかと!ワンちゃん可愛いしね!(大事なことなのでもっかい言いました)

 

 

f:id:asitanoyamasita:20180617184941j:plain

いっぽう社会派サスペンスも「オレたち有力者だけどイヌ嫌いだから追放しようぜ」的なノリもあり、がっつり大人向け!ってよりはシンプルな組み上げ方。

しかし、ここで先ほどの実在感のある日本人たちの人形がすごく活きています。

例えば悪役市長の演説やらプロパガンダやらのシーンがたびたびあります。それを聞く民衆たちのほとんどは、わざとらしく拍手喝采とかするでもなく、或いはワーワーと物議をかもすでもなく
「なんか市長のやること、ちょっと過激かも…」「うーんでも…」「まぁ一度冷静に…」みたいな、混乱はなくも"停滞"しているような雰囲気が場面からすごく漂っていて
で、そのうちに着々と陰謀は進んでいて…っていう、そんな絶妙な演出にちょっぴり肝が冷えましたね。

 

 

f:id:asitanoyamasita:20180617185637p:plain

で、そんな腰の引けた反応のなか、犬たちへの理不尽な悪法にしっかと声を上げるのがメインヒロインとなる交換留学生の白人少女。
どっちつかずなモブの反応の中、犬愛好家の青年団リーダーとして市長に立ちはだって犬の治療を訴え、陰謀に打ちのめされる科学者オノ・ヨーコさん(なんと声はオノヨーコ本人!)に喝を入れます。

ここからは考え過ぎかもですが、この
「停滞したまま、まぁおカミの言うことだし害もなければ…みたいな反応の日本人たち」と、
「そんな社会を外国からやってきた白人ヒロインがキッカケとなって社会が変わる」っていう構図が

『黒船来航』に象徴されるような「日本の社会はソトから来たパワー…外圧が働かないと、間違っている事もナァナァに進んでしまって、変わらない、変われない…」という観念のメタファーのようにも見えて…色々思わされるなぁ。

※まぁじっさいは単に「日本が舞台で主人公は日本人少年だけど、洋画だからヒロインは外国人の女の子でいいよね」ってトコロでおかしくないですが

 

 

そんな感じで映画「犬が島」の感想でした~。

最後はちょっと込み入った感想も浮かびましたが、基本とにかくストップモーションで動くワンちゃんカワイイ!」「日本の独特な美術が面白い!」みたいな軽いノリで観て全然オッケーな作品でした(←自分がなんか身構えすぎてただけ)!

ストップモーションアニメーション作品って全然知らないんですが、思えば自分もポンキッキーの「ポストマン・パット」とかNHK教育の「プチプチアニメ」でストップモーション作品に親しんで、ああいうチョコチョコした手作り感ある映像の楽しさを思い出したりも…。

そんなストップモーションの新鮮さと、懐かしさも味わえた良作でした~。犬が可愛い!(最後なのでもう一回言いました)

 

メイキングブック 犬ヶ島(仮)
ローレン・ウィルフォード ライアン・スティーヴンソン
フィルムアート社 (2019-01-25)
売り上げランキング: 3,595