映画「ロケットマン」感想!"スターの孤独"を鮮やかに描く楽曲と映像美に三回泣いた!
映画「ロケットマン」観てきました!!
人気アーティスト・エルトンジョンの半生を描いたミュージカル作品です。
クイーンの映画「ボヘミアンラプソディ」に大感動したので、 それと同じ監督が今度はエルトンジョンを手がけると聞いたらこれは見逃せない!
ネットの感想なども評判上々。期待値マックスで見に行ったら…それを遥かに上回る、感動しまくりの一作でした…!!!
というわけでここからはネタバレありで、「ココに泣かされた…」というポイントなどの感想をば
自分が劇中、思わず感極まったところが3回あって、「僕の歌は君の歌(ユアソング)」「ロケットマン」「アイスティルスタンディング」 がそれぞれ歌われるシーンでした。
尊く美しい友情、ゆえに切なすぎる片思い
まずはやっぱり「僕の歌は君の歌(ユアソング)」のシーン。
自分の性指向に気づいて、無二のパートナー・バーニーへの想いを告げたあと、二人の生活のなかで歌われるコレですよ…。
エルトンの告白には異性愛者としてノーと返しつつも、そこからエルトンを嫌うでも、逆に気を遣うでもなく、今まで通り接してくれるバーニーが素敵すぎるし、エルトンも決して彼に恋愛感情をそれ以上ブツけたり、がっついたりしない。
そんなお互いを尊重する二人の関係だからこそ、いっそう報われないエルトンの片想いが切ない…。
稀代のラブソングである美しい旋律と素朴な歌詞、それに演じるエルトン役の役者さんの真に迫る表情があいまって、もう泣けて泣けて…!
他に挙げる曲はほとんど歌われる際にミュージカル風の映像美とともに見せていく一方、この曲はシンプルに、じっくりと、役者さんたちの演技・表情だけで勝負して見事に成功しているスゴさですよ…!
話は逸れますが、近年広く語られるようになった同性愛への捉え方については、同性愛者も異性愛者も、この映画のエルトンとバーニーのようでいれば間違いないんじゃない?なんて思います。
そういう「模範解答」というか、これぞシンプルイズベストな答えだ!と思える凄く良い描写だなと。
一人の男を苦しめる、『スターの熱狂』の残酷さ
次に、一番感情がぐしゃぐしゃに揺さぶられたのが「ロケットマン」をライブで歌い上げるシーン。
パーティーで薬物をオーバードーズしたあげくのプールでの「自殺ショウ」。 そこから病院へ運び込まれたかと思ったら、矢継ぎ早にライブへの準備に引き回され、きらびやかなスーパースターとしてステージに立ち、歌い上げるこの曲。
劇中の多くのミュージカルシーンでも、特にこの一連シーンは本当にスゴい、スゴいです。
『自殺未遂の内面描写』から『ド派手なコンサートライブ』という、両極にあるようなシーンからシーンへ、とてつもないスピード感のミュージカル演出でもって追い立てられるエルトン。観ているこちらが「もうやめろ!エルトンを休ませてやれよ!エルトンも、もうやめろよ…!!」と叫びたくなるような展開で…。
そしてライブシーン、穏やかな曲調から響く不安げな歌詞は、まるでエルトンの秘めたる悲痛な叫びのようでますますツラい…。
ステージのきらめく装飾やスポットライト、無数の観客の歓声…華やかでハッピーなはずのそれらが、エルトンから逃げ場をなくし、苦しめる、とてもとても残酷な光景に見えてくるんです。
『スターの熱狂』というのはこれほどとてつもなく、一人の人間が背負うにはあまりにも大きいものなのか、と…。
そしてこんなに恐ろしい熱狂を、しかし人々はいつの時代も求めてやまない(今この映画を見ている自分も含めて)という現実ですね。
スクリーンで過剰なほど鮮やかに描かれる、「スター」なるモノの凄まじさ。とにかく圧倒されて、上に書いたようななんかいろんな感情がブワーーーッと色々浮かんできて、涙が溢れていました…
『スターの孤独』というテーマは普遍的ですが、この映画のこのシーンはまさにソレにに真に迫った名シーンだと思います!
全てを晒け出して伝説は蘇る
自分はあまりエルトンジョンに詳しくないんですが、知っている中で一番のお気に入り曲が、劇中のラストで流れた「アイムスティルスタンディング」なんです。
そんなわけで映画の中でも流れたら嬉しいな~と思っていたのですが…まさかまさか!ラストの決着ともいえる、エルトンの『復活』を高らかに宣言するシーンとして使われるとは!もう最高!
劇中の流れを受けて、盟友・バーニーから受け取ったエールを、エルトンが噛みしめるように歌い出すアレンジも抜群。
調べてみると、実際には依存症治療より以前の曲らしいのですが、あのあからさまにゲイカルチャー的なダンサーたちの衣装や振り付けと、装飾は抑えめにカンカン帽にスーツでニッコリ微笑むエルトン…という実際のPVの再現が、素顔の自分・ゲイである自分・派手好きの自分…いろいろ全てを解放する!というメッセージのように思えて、ある種のシンクロニシティだなぁと。
もともと好きだった「アイムスティルスタンディング」ですが、この映画でもっと好きになっちまいましたね〜。
転がり続けることを強いられる過酷なピンボールゲーム
感極まった上記の三曲以外でいうと、ザ・フー好きである自分としては『ピンボールウィザード』が流れたときもアガりましたね…!
ドライブ感あふれる曲のリズムに合わせて目まぐるしくエルトンの衣装が変化していく映像が、まるで休む暇もなくきらめき続けることを強いられる「スター」の目まぐるしさを表したような、これまたエモいシーン。
原曲はザ・フーの曲ですが、この映画においては目も耳もきかない天才ピンボールプレイヤー=コンプレックスだらけの天才アーティスト・エルトンジョン、という自分自身を歌っているように思えてきましたね…。
音楽の才能でガチャガチャとド派手で騒がしいピンボールゲーム=スター街道を突っ走りまくってはいるけど、その速度は本当の自分が目や耳で追えるスピードをとうに越えていて、もはや自分でも歯止めがきかない。そしてゲームを終わらせるわけにもいかない、とにかく必死にプレーを続けるしかないエルトンの姿…という感じで。
内省的な描写をエンタメたっぷりに伝える映像美
楽曲シーンのほとんどは、映画の中で登場人物が歌いだし、パフォーマンスを始め…というミュージカル調でなのがこの映画の大きな特徴ですね。
はじめは比較対象として「ボヘミアンラプソディ」が念頭にありましたが、映画ならではの現実離れした演出のミュージカルシーンが楽しめる点では「ララランド」や「グレイテストショーマン」に近い作品かもしれません。
ストーリー展開こそエルトンの様々なコンプレックスとその過程が描かれる内省的なものですが、かといって絵的に退屈になるワケではなくむしろ逆。
エルトンの楽曲と鮮やかな映像でしっかりエンタメしつつ、エルトンの内面描写を成立させているのがスゴいです。
まるでエルトンがスターとして演じてきたような、きらびやかな世界観をそのまま再現したような映像美で、最後のシーンでお義父さんがつぶやいた「彼は内向的外交型なんだ」みたいなセリフをそのとおり表したような出来栄えです。
そんな風に劇中描かれてきたコンプレックスと最後には向き合い、ラスト力強く立ち上がったエルトンの姿には、「すげぇよエルトン…!かっけぇよエルトン…!!」という称賛とともにこちらの心もカタルシスに満ちて…
名曲を優れた音響で聴くとともに、あの映像美を大スクリーンで体感することも含めて、これは劇場で観ていて本当に良かった一作だな!!と思いました。
ユニバーサル ミュージック (2019-08-07)
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