オハコのこんな事ばっか考えてる。

オハコと申します。オタク関連を中心に広く浅く何かと考えた事を書いていこうと思います。

異星人vsハイド氏、Dr.モローに改造されたピーターラビット…『続リーグオブオーディナリージェントルメン』の毒気満載なパロディはラストまで

アランムーアの海外コミック「続・リーグオブオーディナリージェントルメン」、前回の記事に引き続いて本編を最後まで読み終えた感想をば。

 

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ハイドこえぇ!ハイド悲しぃ!ハイドよくやった!

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クセがありすぎる英文学のキャラクターが登場するのがこの「リーグ」の特徴。
そのなかでもピーキーすぎる位置付けともいえるのが、「ジキル博士とハイド氏」をモトにしたエドワードハイド

前巻では荒事担当のパワーキャラとして、作品のグロ成分を一挙に濃くしていましたが、今回はそんな彼の内面についてもけっこう触れられていたり…悪徳の化身ともいえる彼自身が、ラストに勝利の決め手となった自己犠牲の精神を芽生えさせるまでが描かれています。

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ハイドの皮肉な口調が、その最期に大きな悲哀を感じさせます…やっぱダークヒーローってのは魅力的ですな。

ラストに「ハイドの功績を称えて『ハイドパーク』という名の公園ができた」という小粒ネタも、洒落が利いててニヤリとさせられました。

 

 

透明人間のセンスオブワンダー!かつざまぁwな死にざま

もうひとつ、ハイドの活躍として「本編で人類を裏切って宇宙人に内通した、透明人間・グリフィンを鮮やかに処刑した」ことが大きいですね~!(満面の笑み)

 

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詳しい「ヤり方」は画像をみてお察し下さい。ですが…w

ある意味無敵の『誰にも見えない』能力で負けるワケねぇ~♪とタカをくくっていた全人類の裏切りものを、これまた自身の能力によって実は攻略できていたハイドが余裕しゃくしゃくで屈辱の鉄槌を下す姿がサイコー。

これぞまさに

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って気分でしたw

 

また、透明人間であるグリフィンが殺されたことにハイド以外の人間が気付くシーン…これがとても秀逸なシーンで印象的!

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ハイドが一足先にグリフィンを処刑したあと、後から来たメンバーとともに束の間の休息をとるシーン。その時なぜか突然、ジワジワとハイドの身体や屋敷中に赤い血が浮かび上がってきて…

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なんとこれは「透明人間・グリフィンの血痕」
殺された時点では透明だったグリフィンの身体や血が、死んだことによって徐々にその透明能力が失われていき…というワケ。なんて最高にセンスオブワンダーでスリラーでグロいシーンなんだぜ!ヒャッハー!

わざわざグリフィンの殺害を伏せ、何食わぬ顔でメンバーと食事をとる、悪意たっぷりなハイドのキャラクターが窺えるのも良いですね~。

 

 

「モロー博士」に改造された、絵本や童話の森のなかまたち…

ほかに特に面白いエピソードとして、「ドクターモローの島に赴く」というシーンも印象的。

 

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本編のなかで登場するドクターモローは、イギリス政府の特別許可を得て『動物を人間にする実験』を繰り返すマッドサイエンティストとして登場。彼が改造した「動物人間」の数々もワンサカ出てくるんですが、もちろんそいつらも英文学や絵本、童話などパロディの宝庫ですw

右下にいるピーターラビットなんかは服こそ同じですがなんかめっちゃグロかったり、「クマのルパート」ってのもチラッと出てきて絵柄だけは知ってた気もしますw

あと、この紳士服を着てクルマを運転してくるカエルのキャラクターは元ネタがピンと浮かびました!

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「楽しい川辺」という童話の、ミスタートードというキャラクターだそう。子供のころにこのイラスト、見覚えがおぼろげにあるな~。

子供向けキャラクターも抜け目なくというか、容赦なく陰惨なパロディに引きずり込むアランムーアの恐ろしさよ…w

 

 

ラストは思いの外アッサリ

そんな感じで名物シーンが満載な「続リーグ~」なんですが…唯一不満があるとしたら、ラストがちょっと物足りないかな~とか。

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本編のラストは、パロディ元「宇宙戦争」を下敷きにスパイスを加えた形で宇宙人を撃滅せしめるのですが…そこらへんの描写がちょっとアッサリしてて。

もっと死にゆく宇宙人のざまぁな姿とか…あと巻き添えを喰ってイギリス政府に見殺しにされる市民の阿鼻叫喚とか…例えば同じアランムーア原作の「ウォッチメン」で"イカ"にニューヨーク市民が虐殺されるシーンのような、そういう迫力でもっと見せて欲しかったかも。

基本的に「続リーグ~」での大英帝国政府はクソなので、ラストでもその権力のクソっぷりをもっと見てみたかったなぁw

まぁ~でも、「続リーグ」のグラフィックはペン線画による冷淡でスッキリした描線と淡めなカラーリングなので、エピソードの見せ方もあまりクドくしないように終わらせてるのかなーとか思いました。

 

 

アランムーアの「体験」を移した作品?

そんな感じで、「続リーグオブオーディナリージェントルメン」の感想でした~。
アランムーアという人は、膨大な知識や資料を総動員して編み込むように作品を仕立てるような作家だと思うのですが、この「続リーグ~」に関してはことさら本人の「シュミ」が反映されてんだろな~とw

作者のアランムーア自身もイギリスの出身。イギリスの文学や風俗まで扱うこの作品は、もしかするとアランムーアという人が血肉に受けた物語・文化・娯楽…をそのままマンガにしたような作品と言えるのかもですね。

 

 

 

ほかに「リーグ」に関しては、ストーリーもキャラ設定ももっととっつきやすく改変されまくった『リーグオブレジェンド』というハリウッド映画版もあります。
実をいうと、自分がアランムーアの名を知る前からこの映画にハマって原作たるこのコミックも買いはじめたワケで…

次はその映画『リーグオブレジェンド』についての記事も書いてみようかな~と。