若き天才の活躍を楽しみつつ、戦艦大和の正体に迫る一作!映画「アルキメデスの大戦」感想
映画「アルキメデスの大戦」観てきました〜。
あの監督…!?と思いきや大満足!
劇場の予告で初めてこの「アルキメデス」を見たときから、『戦艦大和のCG迫力あるし…数学と軍人という組み合わせ?へぇ、面白そう』てな感じだったんですよね~。
なので、後に"あの"山崎貴監督の作品だと知ったときはちょっと意外でしたw
どうしても山崎貴作品と言うと、「スタンドバイミードラえもん」とか、最近の「ドラクエ・ユアストーリーズ」とか…何かと駄目なほうの評判ばかり。
うーむ大丈夫なんかなーーっ!?と思いつつも、Webの感想や「アトロク」での映画批評などでも評価は軒並み良かったので、これは予告編で感じた面白さの直感を信じて、見に行ってみよう!とw
見終わった感想は…いやー面白かったです!
「太平洋戦争」や「数学」といったキーワードから、なにか小難しく重苦しい雰囲気の映画なんかな~と予想してたのが早とちりでした。
むしろ主演の菅田将暉くんの爽やかかつ奇天烈なキャラクターの演技で、テンポよく楽しく観れるし、ストーリーが探偵モノ風になったり裁判モノになったり…と展開に変化があって飽きがこず、 そして最後はきっちりと、大日本帝国というかつての歴史を見つめ直したメッセージを提示して完結…
と、 エンタメしつつテーマもきっちり描ききった満足度の高い作品でした!
さらに感想書きたいんですが、この作品、終盤に大逆転な展開が何度か発生するつくりなので、そういう点も含めて以下はネタバレありでの感想です~。
「大和沈没」へつながる衝撃のラスト
いきなりですがこの映画、やっぱりラストの大逆転の連続(主人公が不正を暴いたのに敵側が開き直って、やはり戦艦大和が作られることに→かと思いきや敵の大和案は設計に不備があり建造は撤回される→さらにかと思いきや、主人公が敵側に説得され、最後は自ら大和建造に関わってしまう…)が印象的でしたね〜。
特に最後の最後、主人公が大和の建造に同調してしまうところ。
ぶっちゃけかなり強引な理屈ではあるし、映画の中でも敵役の将校の"演説"のみで、ラストが決着する見せ方は少し単調かなー…と思いつつも!
とはいえこの映画の当初の目的──冒頭でも壮絶に描かれた『戦艦大和とはどういった存在なのか?』というテーマをこのラスト数分間の中できっちり語り尽くしていて、ここには唸りました。
驕りが産んだ美しき兵器・大和
戦艦大和と聞くと、よく言われるのは『軍部が古くさい大艦巨砲主義を貫いた結果』というイメージ。
しかしこの映画ではたんに『愚かな軍部の象徴』というミクロな結論だけでなく、もっとマクロな規模に批判の対象を拡大していて…
それは日露戦争の勝利に酔いしれていたずらに好戦的となった軽薄な世論、あるいは強力な兵器をふりかざしただけで「強くなった」気になってしまう戦時の心理…そんな『戦争へと向かっていく当時の大日本帝国という国、人々、すべてを象徴しているのが戦艦大和』なのだ、という痛烈な批判。
これは物語上にも具体的に組み込まれていて、例えば視察のため乗艦した戦艦・長門を見て、軍人嫌いだったはずの主人公が思わず「戦艦とはこんなにも美しいのか…」と感嘆する姿、そしてウキウキで船体のあちこちを巻き尺で測る=高い歓心を抱いてしまう姿、そしてラストの『君もこの戦艦を作りたいだろう?』という敵側の甘言に心が揺らぐ姿…といった描写にも表れています。
自分もオタクであるので、例えるならやっぱりスーパーヒーローが拳を振るう姿や、スーパーロボットが振りかざす超兵器に「カッコいいぜー!!」と、心ときめいてしまうのも事実。
そんな風に、映画の序盤でも戦艦大和の模型が初めてお目見えするシーン、大和建造賛成派の軍人たちがことさら模型を見て幼稚にはしゃぐ姿が描かれているんですよね…ここは観客にすれば『まったくなんて不合理な…』と鼻で笑ってしまうシーンなのですが…
映画をラストまで観ると、その笑ってしまうような幼稚な精神性を、はたして日米開戦前の好戦的に染まった当時の世の中にいて、今と同じように冷静に否定できるのか?大和を見て"いい気"になったりしないでいられるのか?
と自問自答してしまいましたね〜…。
主役と相棒、二人の若者の演技が良い!
と、テーマについてあれこれ考えさせられる作品でもあるのですが、同時に菅田将暉たち役者陣のキャラクターも良かったですね〜。
特にやっぱり、主人公を演じた菅田将暉が良い!さすがフィリップ!(by仮面ライダーW
最初こそ変人かつ生意気な天才…という感じだったのが、作業を進めていくうちに「大和建造を阻止して日本を救う!」という使命感に燃える、漢の顔つきへ。
しかしラストでは、そんな自分ではとうてい太刀打ちできない『闇』を知ったことで打ちひしがれ、あげくには悪魔に魂を売ってしまい…と、顔つきが変化していくさまに主人公の内面が表れていて引き込まれました。
また、戦艦の1部品から美女の顔まで、あらゆるものを「巻尺で測る」という独特のモーションも面白くて、映画を見終わって家に帰ったら、思わずちょっとモノマネしてみたり…w(いい年してなにやってんだか)
おつきを任された、同年代?の少尉との友情も良かったですね〜!
主人公のあまりの変人ぶりと大胆不敵さに辟易していたはずが、 そのずば抜けた才能を惜しみなく職務に注ぎ込む姿に惚れ込み、共に使命を果たそうと奮闘する姿。
奇人変人な天才イケメンと、マジメだけど垢抜けない助手…という二人の組み合わせも、オタク的に言うならば『カップリング』的な完成度バッチリで、これはBL好きな人とかたまらんのでは!?なんて思ったりw
…と、 そんな感じの「アルキメデスの大戦」感想でした~。
作品全体は史実に大胆なフィクションをつなげてエンタメ性ばっちりなストーリーを展開しつつも、ラストは"大和沈没"というあらがいようのない歴史へとつなげ、考えさせられる…
まさに夏の終戦記念日前後に観といて正解だった、良い戦争映画でありました。