先日、話題の「富野由悠季の世界展」を観に、兵庫美術館まで行ってきました~。
全体の感想として、まず言いたいのは「これは富野由悠季だけじゃない、富野アニメに関わったすべてのクリエイターの世界展だ!」ということ…!
自分はてっきり「富野監督直筆の絵コンテとか設定資料とか、そういうのだけあるのかなー?」なんて思ってましたが、ところがどっこい。
安彦良和、湖川友謙、大河原邦男、永野護、安田朗、シドミード、etc…
パッとあげられるだけで、この錚々たる──特にロボアニメ好きにはたまらんであろう──クリエイターたちが手掛けた生資料が、じっくり観ていて時間が足りなくなるくらい膨大に展示されているんです…!
信じられないってヤツぁ、この会場でもらった作品リストの膨大っぷり…ホラ、見ろよ見ろよ。
(これで半分ですからね…?)
メディアで「富野展」の紹介はたびたび見かけますが、実際に行った自分からすると、この豪華すぎる展示内容がイマイチ伝わってないんじゃねーかなぁー!?とヤキモキするくらいです…!
自分もココまで充実しすぎてる展示量だと思ってなかったし、そんな風に勘違いして見逃す人がいたらもったいないよー!
…ってワケで、この記事にてその「膨大っぷり」の一端だけでも感じてもらえれば幸い。
あと、今回の展覧会そのものの満足ポイントとして、資料と一緒にかかげられている「解説文」や「映像展示」がすごく良かったです。
このイベントのキャッチフレーズに「概念の展示は不可能なのだが…」という富野監督の言葉が使われているのですが…
いやいや、コーナーごとの解説文は読みやすく、かつ的確に富野監督が作品にこめたであろう『概念』を伝えてくれるし、「アニメ作品の展覧会」だからこそ展示内容に照らし合わせた映像展示の数も豊富で、これまた『概念』の理解への大きな助けに。
資料を揃えるだけでなく、その展示の見せ方を担うスタッフが持つ熱意…監督が無理だという「概念の展示」にそれでも到達しよう、可能にしようという熱量を感じました!
(やっぱり富野監督って愛されてるなぁとw)
そんなわけでこれ以降は、自分が会場のなかで思いついてメモした(会場内でも鉛筆ならメモOK)ことを思い出して、作品ごと・テーマごとに分けて、書き散らしていきます~。
アニメ監督以前の富野由悠季
富野監督がアニメ業界に入るまでの創作物、そして監督という大きな役職に就くまでに携わった仕事の資料のコーナー。
幼少期や学生時代などから文章・独自の論文・マンガ・イラスト(小松崎茂風だったり)などなど…とにかく文章から絵まで、学術的なことから創作まで、いろんな分野を手掛けていて驚いた。
このいろいろな創作が総合的にまとまって、富野由悠季のコンテマンとしての才能、ひいては「あらゆる視点から物語世界を構築していく」監督という仕事をするために生まれた人なんだな、と感じられた。富野の全身が監督。
赤毛のアンにおいての高畑監督との出会い
高畑が徹底したリアリズムの追究が、想像・誇張が肝であるSF世界のなかでのリアリズムのの追求に影響を…といった観点の解説が面白かった。
ファーストガンダム
やはり目玉と言ったらココが一番でしょう!展示内容の充実度もここが一番大きかったかと。
『人類が人間を宇宙に移民させるようになって既に半世紀』という宇宙世紀…"ガンダムワールド"を構築していった構想メモ…スペースコロニーの設計イラストやSF設定資料、作品が描くテーマについての論考…具体的なストーリーとシリーズ構成について…どれも「今日まで続くガンダム」の始まりを肌に感じさせる、鳥肌ものの資料のオンパレード!
そして安彦良和さんの直筆のレイアウト資料キター!キャラ設定表も…安彦さんの生の線、めちゃくちゃ綺麗…!かっこいい…!!
特に感動したのが、カイとの悲恋を辿ったミハルの設定表…安彦さんの描くミハル、めちゃくちゃ可愛い…!
ミハルの死亡シーンのコンテも展示されていて、じんわり涙がこみ上げてきた…コンテを切った富野自身が泣いて、コンテを見た安彦さんも泣いて、それに呆れた板野一郎も泣いた!という逸話も納得…!
富野お気に入りシーンとしてどこかで挙げていた、セイラさんがベッドで「キャスバル兄さん…」と泣き崩れる一連のシーンの資料も!
このシーンの安彦さんの原画が!憂いに満ちた女性の感情が表れるような流麗な線と、それが連なって生まれる動き…アニメーション…安彦さんが絵やマンガだけでなくアニメーターとして天才といわれるのも納得やなって…(改めて言うまでもねぇ!)
富野監督の自作ガンプラも展示されてるw
ひとつは全身銀色に塗られたガンダム。なんでも、『おもちゃ販促のためという制約がなければガンダムはこの色でやりたかった』とされるそうで。
ララァのエルメスもあり、ダメージのディティールや汚しの彩色にこだわりが感じられました。
イデオン
「イデオン」のコーナーもやはり充実の内容。特にプロジェクターの大画面で『発動編』のラストを長尺で流し続ける映像展示は迫力がありました。
そして湖川友謙さん直筆の生資料!! あのリアリティある硬質なタッチの「生の感触」に、これまた惚れ惚れ…
キャラデザ、メカデザなどの作業資料から制作資料、ポスターやパッケージなどで使われたカラーイラストの生原画など…湖川さん画、多数展示されていて最高…
「イデオン」展示で富野監督が手がけた資料の中でひときわ印象深いのは、直筆のガンドロワの設定資料。
異星人= 地球とは異なる文明・文化…を感じさせる禍々しいデザイン…小脇にイデオンも描かれていることで、イデオンすらはるかにしのぐガンドロワのスケールの大きさを端的に示してして…展示から『圧』すら感じましたw
この恐ろしいほどのスケール感は、銀河全域にまで波及していくイデオンという作品ならではだなぁ…そのスケール感が伝わる富野監督や湖川さんほかスタッフの手腕、やはりスゴし。
ほか、ダンバインやザブングルの展示でも湖川さんの資料多数で、イデオンの全体的に リアリティタッチなキャラデザとはまた違った、「湖川・デフォルメ」をこれまた生の線で楽しめるのが良き。
エルガイム
「重戦機エルガイム」のコーナーでは、やはり永野護さんが手がけた資料がどれも魅力的。
特にキャラデザ・設定表と併せて展示されていた、キャラクターのファッションデザインの設定資料が必見!
80年代の独特な最先端ファッションがどれもイカしてて、服の素材なども細かく考えられていて、見応え抜群。
展示資料の中には、永野さんが描いたパイロットスーツの設定資料に、富野監督が「機能性とファッションを混同しちゃいけません!」みたいなお説教を書き込んでいるものも展示されていて、微笑ましいというかw
∀ガンダム
巨匠・シドミードが手掛けた資料キター!
やはり目を引くのはターンエーガンダムのデザイン画。均質でハードで工業的なタッチ…本当に「設計」していくようにターンエーの頭部が描かれていて…今まで見てきた日本のクリエイターとはまったく別のオーラ…『スゴ味』があるッ!(唐突にブチャラティ
さらにあきまん…安田朗さんの、アナログ画材を使って∀キャラクターたちを描いたイラスト原画も展示されてて…すごっ…!
あの優美な色彩と筆使いをのせた大きなキャンパスが、一枚のみならずいくつも展示されていて、なんと贅沢な…。
ターンエーは「世界名作劇場」的な世界観が舞台だけど、そのビジュアルを構築するため海外へのロケハンなどで徹底的にリサーチした資料も多く展示されてて興味深かった。
…以上、自分が印象に残ってメモしておいたのはこんなところです~。
…でも実は!これだけ書いてもまだ、"時間切れ"で見逃してしまった展示がたくさんあるんですよ!!(「ブレンパワード」とか「Vガンダム」とか「Gレコ」とか…!)
6時閉館でわりと開館時間は長くしてくれているし、そのうえ余裕をもって昼すぎには会場にいたはずなんですが… かるく4時間は観てたはずなのに、まだ足りなかった…だと…!?
なのでこれから行くひとは、出来る限り開館から早く行って、同時に好きな作品はコレと決めて、どこを重点的に観てまわるか事前に決めておくのがベスト!…いや、"マスト"!…でなければマジで時間足りませんよ~。
あと、美術展で音声ガイドが用意されてるときは必ず買うようにしてて、『富野展』の音声ガイドも「Gレコ」のキャラが寸劇風で解説してくれる!ってコトで買ったのですが…
うーむ、内容は展示の解説に書いてあるものを反復するだけのが多くて、じっくり展示を見る人とか、「Gレコ」や声優さんのファンでもなければ、べつになくても良いかなってカンジでした。
そんなわけで、『富野展ってどんな感じなのよ?』って人の参考になれば幸いです。
「富野展」は12月末まで開催されるので、近畿圏のアニメファン…特にロボアニメファン・スパロボファンなどは、絶対行くべきイベントですよーッ!