オハコのこんな事ばっか考えてる。

オハコと申します。オタク関連を中心に広く浅く何かと考えた事を書いていこうと思います。

アメコミ「マーベルズ」、マーベルヒーローの歴史を驚異のグラフィックで目撃する一冊

うーんまだなんか頭ボーッとしてブログ書く腰が重い…ってわけでやっとこさのブログ更新。またもや海外コミックがらみですん。

だらだらゲームやアニメ観つつ日々積ん読してたアメコミも少しずつ読破していってるんですが、そして最近読み終わった本がコチラ。

 

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作:カートビシューク 絵:アレックスロスによる「マーベルズ」

ストーリーの内容としては、「マーベルヒーローたちの登場や活躍の歴史を、主人公のカメラマン・フィルの視点から描いていく」といった感じ。

まず初代ヒューマントーチ(ファンタスティックフォーのメンバーとは別のひと)と、ネイモア・サブマリナーという最古参ヒーローが登場し、その後キャプテンアメリカが表れて第二次世界大戦に参戦したり、戦後はギャラクタスが襲来する危機にファンタスティックフォーが立ち向かったり、「X-MEN」のミュータント人種問題が描かれたり、スパイダーマンとグウェンの悲劇を目の当たりにしたり…

と言った具合に、言わばコミック世界の一般市民という主人公を通して「マーベルが刊行してきたコミックの歴史をなぞっていく」ような試みがなされています。

 

 

アレックスロスの驚異的な画力&構図

本書を読んでいて、なんといってもアレックスロスの描く「めちゃめちゃリアルな絵」が常に目を惹きますね〜!

 

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展開されている物語は間違いなく「空想の物語」なのに、まるで現実の世界で写真を撮ってきたようなリアルさ。思わず「これ現実にあったことなんじゃ…?」って何度思えてしまいます。

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アレックスロスは単純に画力はもちろん、『構図のつくり方』のセンスも凄まじいですね…!

上の絵は最初のジャイアントマンのシーンの一枚絵バージョン。ただジャイアントマンが街並みを跨いでいく姿を描くんじゃなくて、それを「カメラのファインダーごしに覗き込んで見上げている」構図で映し描くという…ここまで巨大感を何倍にも感じさせる構図の発想たるや…もう圧倒されっぱなしです。

 


リアルな絵と、一歩引いた語り口の相乗効果

そんな感じでまずは目に入ってくる絵に視線を奪われがちなんですが、どっこいセリフまわしもストーリーの進め方にもグッと引き込まれます。そう思わせるのが主人公のキャラ設定。

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主人公はヒーローたちを追いかけるカメラマン。ヒーローの戦いを間近で何度も目撃するのですが、あくまで一般市民なので常に一歩引いた場所から超人たちへの想いを吐露していきます。例えば大戦中はナチス相手に大立ち回りを繰り広げるヒーローたちの活躍をニュース映画越しに観ているときはただ称賛していても、自分たちの身近な問題としてミュータントたちが表れ始めると「異端者」として忌避する差別感情を持ったり…

まずアレックスロスのリアルな絵があり、そこにこの「戦いの当事者ではなく、傍観するしかない一般市民の立場」から見たセリフまわし。この組み合わせによって、ますます前述の「現実にあったことなんじゃ…!?」感が増して、このなかで展開される世界に入り込んでいくような相乗効果を産んでるんじゃないかなーと。

 


ホワイ出版社People!!ナゼ解説がナイ!?

そんな感じで紹介してきたようにこの本のクオリティーは間違いなくタイトルと同じくマーベル(驚異的)に尽きます...!

しかし唯一、大きな不満もあり!それはアメコミ邦訳書では定番の、各ページについての解説がないこと!

本書のストーリーはまさに歴代マーベルヒーロー達の足跡をたどっていくもの。メインのヒーローやヴィランなど各キャラクターの紹介はもちろんのこと、次々とコミックスの世界で起こる出来事やイベント、直接には描かれていなくともコマの絵の中やセリフの端々に溶け込んで仕込まれているサブキャラクターや小ネタについてなど、解説して欲しい...いや教えてくれなきゃいけないコトが山ほどあるのに!!

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たとえば、作中で原作コミックどおりF4のMRファンタスティックとインビジブルウーマンの結婚式が行われるシーンもあるのですが、そこにズラリと参列しているヒーローたちの名前だけでも網羅的に確認しときたいとかね…

ホントよりによってなぜ、この濃厚な「マーベル」世界を味わえる本書にかぎって、各ページの解説付録が付いてないのヨォーッ!!

 

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いちおう年表形式で作中に起こった事件を描いた過去のマーベルコミックスの号数や刊名を載せてくれてはいるんですが…これじゃあ全然物足りーん!

 

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アレックスロスのイラスト制作過程の紹介や、リッチな一枚絵の表紙イラスト・ポスターイラストなども掲載されていて、全然おまけが充実していない!というわけでもないんですが…それでもやっぱり解説は欲しいですヨォ~...!

そういうわけで、本書は読む側のアメコミ知識によってかなり内容の面白さが上下しちゃうような作りになっちゃってると思います。うーむ、せっかく歴代ヒーローたちの大イベントを網羅的に知ることが出来る一冊で、これに各解説があればマーベルヒーロー入門にも良さそうな本にもなりそうのに。唯一そこが残念ですね~。

 

 

マーベル知識が増えるたび楽しみたい一冊

 

ってな不満もあったりしますが、やはり本書の「マーベルの歴史を駆け抜ける」ストーリーと、圧巻のグラフィックによる凄みはガチ。
今後も映画にアニメ、それに邦訳コミックで、マーベルヒーローの世界を楽しんでいくわけなんですが…それにつれてまた新しく「マーベル知識」が溜まってきたら、その度に本書を読み直して「ココのこの部分はそういうネタだったのか!」なんて発見が何度もできる、そんな本になりそうです。