プリチャンが描いた『テクノロジー讃歌』に「ハッカー文化とヒッピー文化」を見る
「キラッとプリ☆チャン」、ついに最終回を迎えましたね…
ラストの余韻に浸りながら、公式の関連ツイートなど読んでたのですが…特に興味深かったのがシリーズ構成を担当した兵頭一歩さんのこちらのツイート。
『キラッとプリ☆チャン』
— 兵頭一歩 (@heichin26) 2021年5月30日
3年間、本当にありがとうございました。
#prichan pic.twitter.com/igsaCtQY4W
読んでるうちに
「これは…プリチャンという作品をさらに深く噛み締めるための、貴重なメッセージだっ…!」
と胸熱になってきたので、自分なりに考えたことなど書いておこうかなと。
プリチャンの裏テーマ「テクノロジー讃歌」
特に刺さったのが
『あるとき監督は、プリ☆チャンにはテクノロジー賛歌という側面もあるといいました』
という部分。
「テクノロジー賛歌」…まさに、プリチャンで描いてきたことを一言で表すならこの言葉だなぁと。
…そういえばプリチャンのエピソードのなかで、上の二つのキーワードをド直球に描いた神回がありましたね。
それは第一期35話、「友情、時をこえてみた!」
プリチャンというシステムはどういった経緯で開発され広まったのか、という過去が明かされるエピソード。
まだ発信できる範囲が限定的だったプリチャンシステムをクルマに載せて、全国各地へ自分達の「楽しい」を届ける、若きプリチャン開発者たちの旅のひとときが描かれます。
「楽しむ若者」のハッカー文化とヒッピー文化
前述の兵頭さんのキーワードとこの回を踏まえて、さらにハッカー文化およびヒッピー文化という二つのワードが思い浮かびまして。
まずハッカー文化についての感覚的な部分について、ウィキペディア記事には
技術を独占するよりも広く共有して、皆で大いに楽しみたいとする奔放さを持っている
とあり、これはまさにプリチャン開発者の時子さんが、プリチャンというテクノロジーを開発・駆使して、『楽しい』をみんなと共有しようと全国を回った姿に重なります。
さらに同じ記事の中に
当時大学において盛んに持て囃されたヒッピー文化の影響を色濃く受けた者も少なくない。
とあるように、ハッカー文化のなかでのヒッピー文化との親和性への言及もあり…
ヒッピー文化と言えば、35話においても登場キャラの60年代感を漂わせるファッションや、ワーゲンバスっぽい車両で各地を旅をする…といった形でオマージュされているのは明らか。
そんな感じで、あの回はまさにプリチャンというシリーズのなかに込められたハッカー文化およびヒッピー文化の精神性…すなわち、「テクノロジー賛歌」と「若者が自分たちで発信する」というテーマに自己言及したような回だなーと。
※さらにもう一つ、上の2つに近いムーブメントで「海賊放送」というものもありまして、その時代を描いた『パイレーツロック』という映画もあります。
1966年、イギリス。皆が聞きたいのは、ポピュラー音楽。BBCラジオが流すのは1日45分。そんな中、船の上から24時間ロックをかける、ゴキゲンな海賊ラジオが現れた!
電波という技術を『ハック』して、自分たちの楽しいを発信するという点でもマーサたちの若き日の活動に通じるものがありますね。
※マーサたちは法律まで侵すような真似はしていないと思いますが…w
テーマを貫くことで既に生まれていたラストへの伏線
そんなプリチャンに込められた「テクノロジー賛歌」をもとに、第二期ではVだいあ、第三期ではマスコッツとソルルナの物語へと展開され、最終回はキラッツの3人がロケットに乗り込んで宇宙にまで「楽しい」を届けるというラストでした。
これも言わばかつてマーサたちが行っていた「配信の旅」の継承とも言えて、もしかしたら一期の35話の時点でとっくに、このラストは決まっていたのかな、なんて思ったり…
そう思うと最終回の一話前にフッと挿入された、35話を使った回想シーン…
この演出はシビれますね~っ!
宇宙へ行くラストもそうですが、そうでなくても第3シーズンでの終盤──巨大なバグホールの襲来という大ピンチにあたって、『たくさんのプリチャンアイドルや観客のいいね!を月まで連れて行く』という解決の手段としても図らずも?伏線になっていたというところが特に、ね。
これもきっと、プリチャンにしっかり『テクノロジー賛歌』というテーマが貫かれていたから出来たことだろうなと。
言わば、「骨太なテーマが貫かれていれば、ラストへの伏線は気付かぬうちに既に生まれている」。そういうことかなぁと思うのです…*1
あと余談ですが、改めてプリチャン第1話を見直してみて気づいたのですが…
初代OPで『世界中をハッピーでつなげよう♪』の歌詞に合わせて「ネットの向こうにいるみんな」が次々映し出されて…
最後に一瞬、宇宙に漂うUFOやエイリアンの姿が描かれるんですよね!
つまり、下手すりゃ初代オープニングの時点であのラストは予言されていた…?
そして最後にもう一つ、感想のなかで「これは…鋭い!」と感じたこちらのツイートも紹介しておきたいっ
プリチャンのテクノロジー賛歌って側面は本当に実感できるもので、2世代上のマーサの配信規模や第1話の舞台のセッティング描写といった配信一つにかかる重さや制約が開発により徐々に解消され終盤は空間そのものを拡げて演出する程技術向上するのだが、それまでの過程も要所要所描く律儀さが良かった。
— とりとうま (@KZMtoma) 2021年5月30日
プリチャンの配信が出来る土台に、サーバー管理とスタジオ提供のプリズムストーン・宇宙衛星でネットワーク強化に取り組む紫藤家・人々を配信の場へ足運ぶよう企画するデザイナーズ・仮想と現実を融合させ完全な体感を実現した輝コーポレーションがあって。彼らは技術が良い未来に続くよう活動してた。
— とりとうま (@KZMtoma) 2021年5月30日
オープニングとエンディングでも夜空に浮かぶ星々を見上げるシーンや光に向かって手をのばすシーンがよくあったなあ印象があって、まだ見ぬ世界に期待して飛び込んでいこうってポリシーが作品の根っこで、その上へ上へ前へ前へって姿勢は強く惹き込まれるものがありました。明るいSF、最高に楽しい。
— とりとうま (@KZMtoma) 2021年5月30日
特に、「プリチャンを楽しむ」人々の後ろにそのテクノロジーを担う存在も多く登場していたという点はなるほどですね…。
前作「プリパラ」ではそこらへん「システムでーす」で片づけたり、先には古代プリパラが…なんて超文明的?な設定もあったのと比べたら、やはりプリチャンのシステムは地に足がついていてまだリアルな方だな、とw
と、こんな感じで「テクノロジー賛歌」というキーワードから触発された勢いのままいろいろと書いてみました~。
プリチャンについて他にも色々語りたいので、また別の記事で他にも色々書いていこうと思いまする。
↑この記事で語ったプリチャン35話、自分はネットフリックスで見直しましたが、他のサブスクにもあるかも?